胃ろう造設の実施件数が減っていない現状について

最終更新日:2018年5月22日

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言語聴覚士コラム

胃ろう造設の実施件数が減っていない現状について

2015.12.16

言語聴覚士は患者のリハビリテーションをサポートする専門職だ。業務の中には高齢者や障害者のための嚥下訓練も含まれ、その際には各々の症状、病態に合わせて機能の維持回復に努める。
自力で食べるということが本人の精神と肉体に与える影響は大きく、大変意義のある業務だと言えるだろう。
これに対して、物を咀嚼し飲み込む一連の動作が不可能と判定された患者には胃ろうを造設し、直接胃に栄養を送り込む。
いったん胃ろうを造接した患者が再び自力で物を食べられるまでに回復する確率は、残念ながら高くない。いかに本人が持つ元々の機能を守るか。それが超高齢化の現代における言語聴覚士に課された課題のひとつだ。
厚生労働省の立場から見ても胃ろう造設件数の増加は望ましくないものと考えられている。

平成26年の診療報酬改定の目的と成果

去る平成26年度の診療報酬改定においては胃ろう造設に関する評価点数の引き下げが断行された。
医療報酬を引き下げることで、病院側からの積極的な新規胃ろう造設件数を抑制しようと言う目標のためである。

■胃ろう造設に関する報酬項目の改定
・改定前
 胃ろう造設術:10,070点
 摂食機能療法:185点
 胃ろう閉鎖術:12,040点
・改定後
 胃ろう造設術:6,070点
 摂食機能療法:185点
 胃ろう閉鎖術:12,040点
 胃ろう造設時嚥下機能評価加算:2,500点
 経口摂取回復促進加算:185点
 胃ろう抜去術:2,000点


改定前まではそもそも「胃ろう抜去術」については点数が付かなかった。これを考えれば病院側としても胃ろうの新規造設に力を入れがちになっても不思議はない。
また、抜去術以外にも改定によって新たに点数が設定された項目がある。
胃ろう造設時嚥下機能評価加算、経口摂取回復促進加算の2項目だ。
厚生労働省としてはこの新規加算を設けることで、医療サービスを提供する医師、看護師、各種療法士からも患者の機能回復へポジティブに取り組ませようと意図したのだろう。
平成27年11月18日に公表された中央社会保険医療協議会総会における「2015年度診療報酬改定の結果憲章に係わる特別調査」内、「胃ろうの造設等の実施状況の調査」の内容が明らかになると、胃ろう造設の評価点数引き下げが実施件数抑制になんら影響を及ぼさなかった実態が分かった。
評価点数の1点はそのまま病院の収入10円に換算される。点数引き下げが実施されたのだから、病院にとっては胃ろうの新規造設に対するメリットは激減したはずだ。ではなぜ胃ろうの新規造設件数は減らなかったのか。

病院の限界

日本には多くの病院がある。しかし、その多くが人材不足にあえいでいる。
それぞれの病院から見て、平成26年度の診療報酬改定は希望を持てるものだった。当時のフィールドワークでは「胃ろうの造設を断ることが増えた」という質問に「大いにあてはまる」と回答した割合は全体の6.9%に及ぶ。
しかし、今年の調査では「あまり当てはまらない」「まったく当てはまらない」が50.2%を占めた。
改定の効果を検証する調査に対するレスポンス率も高くない。
特に経口摂取回復促進加算の届け出は全体の7%に留まっており、経口摂取回復促進に注力できない理由を病院側はこのように回答している。

■経口摂取回復促進加算の届け出がない理由
・経口摂取回復率の計算に必要なデータ収集が困難:63.6%
・経口摂取回復率35%以上が達成困難:60.0%
・摂食機能療法専従の常勤言語聴覚士を1名以上配置できない:21.8%


日本は世界でも特に胃ろう造設件数が高い国だ。
いまだに事前の摂食機能評価なしに新規胃ろう造設が行われるケースも少なくないと言う。
病院に言語聴覚士がいたとしても、摂食機能療法専従の人材確保は難しい。というのも、多くの言語聴覚士は病院勤務の中で他部署と兼任しているものだからだ。
厚生労働省はこの結果をフィードバックして新たな取り組みに反映する必要がある。
どのような方針で新たな改変が行われるにしろ、動静にはこれからも注視し続けるべきだろう。

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