人工内耳に新タイプ 残存聴力も失わず

最終更新日:2018年11月18日

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言語聴覚士コラム

人工内耳に新タイプ 残存聴力も失わず

2015.04.28

これまで重度の難聴だとしても聴力が一部でも残っている限り、人工内耳手術を受けることが出来なかった。 今回登場した新しい「残存聴力活用型人工内耳」は、補聴器の機能も併せ持っており2種類の刺激で音を聞き取るのが従来型とは大きく異なる。 さらに、この残存聴力活用型人工内耳は、健康保険も適用されることになった。 この新型人工内耳の登場で言語聴覚士が携わる人工内耳トレーニングにも、大きな変革がもたらされる可能性がある。 従来の人工内耳の場合、手術適用条件は聴力レベルが90デシベル以上の重度難聴者に限定されていた。 そもそも耳の奥にある内耳は、外耳、中耳を経て届いた音の振動を電気信号に変換し聴神経に伝える器官だ。
この役割を担うのが渦巻き状の「かい牛」である。人工内耳は、障害されたかい牛の機能を代替する医療機器で、マイクで拾った音を電気信号に変換し、かい牛に差し込んだ細長い電極に送り込むことで聴神経を直接刺激するもの。
国内では年間600人以上が人工内耳を埋め込む手術を受けているという。
ただ、従来の人工内耳に使われる電極は材質が硬く、電極を挿入する際にかい牛の骨に穴を開ける手術法が一般的だった。
これまでの人工内耳手術では、かい牛が傷むことは避けられないため、手術要件が重度の難聴者に限られていた経緯がある。

新型人工内耳は難聴にも適用

一方で、難聴には小鳥のさえずりや家電のアラームといった周波数の高い音は全く聞こえないのに、トラックのエンジン音のような低い音は分かるというタイプがある。
こうした人達は会話も非常に不便だが、今までの補聴器ではカバーすることができず、結局難聴が悪化するまで人工内耳の埋め込みを待たなければならなかった。 今回登場した「残存聴力活用型人工内耳」は、このタイプの難聴が対象
耳掛け式のマイクで集めた音を高さ(周波数)によって分け、高音は電気信号としてかい牛内の電極へ、低音は増幅した音声として外耳に送る。 いわば、人工内耳と補聴器の合体版といえるものだ。
信州大学の宇佐美真一教授(耳鼻咽喉科)は、このような新しい人工内耳が登場した理由について「これが使えるようになったのは、体への負担が少ない電極と、それを生かす手術法が開発されたため」と解説する。
新型人工内耳に使用される電極は先端の最大径が0.5mmと細くしなやか。
手術はかい牛の骨に穴を開ける従来の手法ではなく、かい牛に元々存在する小さい窓を活用し、その膜から電極を差し込む。
この際、内耳の炎症を防ぐステロイドを投与することもポイントだという。
開発された欧州では、既に承認を受けていることに着目し、宇佐美さんらが申請。
これを受け、2010年に国が先進医療として承認。信州大などで成人計24人の手術を実施した結果、人工内耳使用時の聞く能力が向上した上、低音部の残存聴力も、若干の低下はあったものの失われずに保たれた。

2013年に保険適用を受け、適用広がるか

この新型人工内耳は2013年9月に薬事承認され、昨年7月には健康保険が適用された。 手術は全身麻酔を施した上で2~3時間程度。耳鼻咽喉科学会では、対象者の聴力レベルや聞き取り能力をガイドラインで詳細に設定したほか、手術で残存聴力が悪化するリスクを十分受容していることなども条件とした。
新型人工内耳の埋め込み手術は今後50例まで全例登録し、残存聴力への影響に重点をおき、2年間追跡することになっている
しかし、人工内耳手術は埋め込みが終わりではなくスタートであることは専門家の間ではよく知られており、今後この新型人工内耳で生活の質(QOL)がどこまで向上するかは、設備や言語聴覚士を含む専門家によるリハビリテーションが鍵となるだろう。

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