「BDNF投与」で心不全による運動能力低下が改善

最終更新日:2019年3月19日

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薬剤師コラム

「BDNF投与」で心不全による運動能力低下が改善

2019.03.04

北海道大学は1月21日、絹川真太郎氏(同大大学院医学研究院循環病態内科学教室講師)らの研究グループによって、「脳由来神経栄養因子(BDNF、神経系の成長や維持に不可欠なタンパク質)」の投与で、心不全による骨格筋ミトコンドリア機能と運動能力の低下の治療することができることを明らかにしたと発表した。

同研究成果は、「Circulation」に掲載されている。

心不全患者の運動能力低下を治療する運動トレーニングに代わる薬物治療

心不全患者は運動能力が低下するが、これには心不全の予後不良とも密接に関連している。この運動能力の低下には、「骨格筋ミトコンドリア異常」が関わっていると考えられている。

運動能力と末梢骨格筋異常を改善する唯一の治療法となるのは運動トレーニングであり、心不全の予後を改善することも知られている。

しかし、重症の心不全患者などのケースでは、身体活動が大幅に制限されており、十分な運動トレーニングを行えないケースが多く、代わりとなる薬物治療を開発することが求められている

心不全の生命予後・再入院などと関連する「血中BDNF」

「BDNF」は、神経系の成長や発達・維持に関与するタンパク質であることが知られる脳由来神経栄養因子。

運動を行うことで、血中・骨格筋における「BDNF発現」が増加することも報告されている。

同研究グループはこれまで、「心不全患者において「血中BDNF」が低下し、その血中レベルが運動能力と密接に関連していること」や、「「血中BDNF」が心不全の生命予後や心不全による再入院などにも関連すること」を明らかにしていた。

運動能力低下や骨格筋ミトコンドリア機能異常と骨格筋BDNFが密接に関連

同研究グループは今回、心不全モデルマウスへのBDNF投与によって、運動能力低下と骨格筋ミトコンドリア機能低下が改善するとの仮説を基に以下のような検証を実施した。

・心臓の左冠動脈を糸で縛り、心筋梗塞・心不全を誘導した「心筋梗塞後心不全モデルマウス」と、心臓の左冠動脈に糸を通す処理のみを施した「比較対象となるマウス(偽手術群)」を使用。

・心筋梗塞作成2週間後に、「心機能評価(心エコー検査)」、「運動能力評価(小動物用トレッドミル)」、「取り出した骨格筋のミトコンドリア機能評価(高感度ミトコンドリア呼吸能測定装置)」を実施。

・別の群のモデルマウスを作成、心筋梗塞手術後2週間目から、「リコンビナントヒトBDNF(1日あたり5mg/kg体重)」または「同BDNFを含んでいない溶媒」の皮下投与を2週間実施後、「心機能」、「運動能力」、「骨格筋ミトコンドリア機能」の評価を実施。

検証の結果から、心筋梗塞後心不全モデルの運動能力低下や骨格筋ミトコンドリア機能異常と骨格筋BDNFが密接に関連していことが明らかになった。

運動能力低下と骨格筋ミトコンドリア機能異常が治療可能に

さらに、リコンビナントヒトBDNFの投与により、心不全の運動能力低下と骨格筋ミトコンドリア機能異常が治療できることも判明。

心筋梗塞後心不全モデルは、心筋梗塞の2週間後には、心機能は障害され、心不全を呈すと同時に、運動能力も偽手術群のおおよそ「40%程度」まで低下し、骨格筋ミトコンドリア機能は低下していた一方、別の群のリコンビナントヒトBDNFを2週間投与した心筋梗塞後マウスでは、溶媒を投与した心筋梗塞後マウスと比較すると、有意に運動能力が回復(偽手術群のおおよそ70%まで)していることを確認。

骨格筋ミトコンドリア機能も有意に改善していたが、心機能や身体活動量には影響していなかった。

骨格筋のBDNF発現量を調べた(ウエスタンブロット法)ところ、心筋梗塞後マウスでは、その発現量が低下し、BDNFの投与で改善した。

糖尿病など種々の慢性疾患における健康寿命の短縮に

今回の検証結果から、心筋梗塞後心不全モデルの運動能力低下や骨格筋ミトコンドリア機能異常と「骨格筋BDNF」は密接に関連することが判明。

リコンビナントヒトBDNF投与により、心不全の運動能力低下と骨格筋ミトコンドリア機能異常が治療可能であることも明らかになった。

同研究グループでは、これは、運動能力をターゲットとする新たな治療法の発見であり、臨床応用を目指した研究へとつながる貴重な基礎研究として評価されるものとしている。

また、今回は心不全が対象であるが、骨格筋ミトコンドリア機能異常に基づく運動能力低下は、糖尿病を始めとする種々の慢性疾患における健康寿命の短縮に関与しているため、幅広い疾患への応用も期待できるとしている。

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