医療功労賞受賞者の功績を紹介

最終更新日:2018年10月23日

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作業療法士コラム

医療功労賞受賞者の功績を紹介

2016.03.24

読売新聞社が主催し、厚生労働省、日本テレビ放送網の後援を受けた「第44回医療功労賞」という、主に地域医療への貢献者を対象とした賞がある。
2016年度、これに選ばれた医療法人「郷の会」理事長、田中敬造医師の功績について考えてみたい。
田中敬三医師は精神科の医師だ。
精神科領域は作業療法士にとって主な職業領域であるものの、かつての精神科といえば一般的に偏見が大きく、そこで働いていると世間に表明しない作業療法士もいたという。
新聞社の取材に対して田中医師が語っているように、十年、二十年前の精神病棟は決して恵まれた環境になかった。
特に重篤な精神疾患を持つ患者が収容される閉鎖病棟は「回復を目指す」ための医療施設という特性が薄く、いかに患者からの影響を外部に漏らさないか、そこに役割が集中していたのだ。
今年度医療功労賞を受賞した田中敬三医師の功績を通して、精神科領域の医療全体を押し上げていける可能性を考えてみたい。また、その中で作業療法士はどう活躍していけるだろうか。

田中敬三医師の功績について

同賞は長年の地域医療、福祉への貢献を認め、たたえる賞だ。
田中敬三医師は和歌山県内で受賞した2人の内の1人であり、精神科領域のあり方を根本的に改善しようと取り組んだ実績が認められた。

精神医療の孕む問題点を世に問いかけ、患者と医師、看護師、薬剤師、作業療法士を初めとした医療従事者との信頼関係を構築する必要性を訴えた点で、田中医師の取り組みは際立っている。

精神疾患を抱える患者との接し方は難しい。
意思の疎通すらおぼつかない重症患者の場合は病棟内で暴力的な行動を見せるケースも多く、作業療法士や看護師に危険手当が付く施設もあって、医療従事者と患者の間には埋めがたい距離があった。
それは時として鉄格子のような物理的な形で患者に突き付けられ、患者に対しては療養環境の悪化、医療従事者にとっては職場環境の悪化につながっていた。

田中医師の取り組みはまず病棟の環境改善から始まった。患者を閉じ込める「監獄」を作るのではなく、患者が精神疾患を乗り越える「療養環境」の構築から、そこに所属する人々との「人間関係」の形成、ひいては治療後の社会復帰までを思い描いて改革は進んで行ったのである。

変わる精神科領域における作業療法士の役割

精神科勤務の場合、やむを得ず患者を取り押さえなければならない状況に接することがある。これは一つの事実だ。
しかし、患者との対決を前提とした過去の精神科領域での役割と、改革が進みつつある現代では作業療法士の精神科病棟における役割も変わってきたのではないか。

精神病は誰もが陥る可能性があるこころの病気なのだ。
これからの作業療法士は、患者ひとりひとりに向き合い、見えない傷に寄り添うことが求められている。
近年、作業療法の選択肢は目覚ましく拡大した。
日常的な動作を通じた機能回復効果は近年研究分野でも注目が集まっており、洗濯や料理、掃除などによる作業療法があるかと思えば、実際に農作業を取りいれる施設もあると言う。
また、女性に向けてメイク療法などの、一見して医療行為とは思えないような手法が功を奏するケースもある。
精神科領域に従事する作業療法士は、医療行為にこだわることなく患者が「本当に求めるもの」を追求するといいだろう。

未だに偏見は根強く、精神科に収容された患者の社会復帰には厚く高い壁が立ちはだかっている。しかし、建設的に回復を目指す療養施設が増え、そこで見えない傷を癒す過程で他人との関係をよりよく形成する機能を回復出来れば、精神疾患を抱える患者であっても社会に求められる人材になり得るはず。
もちろん、その実現には長い苦難が伴うに違いない。作業療法士はその手助けができる貴重な職種だ。
患者はひとりの人であり、医師も看護師も作業療法士もただひとりの人に過ぎない。
社会的役割には隔たりがあるとしても、目の前にいる誰かに降りかかる災厄はその相手だけのものではなく、自分のものでもあることを忘れずに看護に当たってほしい。

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