「目の動き」で発達障害を診断
2015.07.14
子どもの目の動きから、素早く動かせるかどうかを計測することで、発達障害の一種である注意欠陥多動性障害(ADHD)の早期診断を行う手法を大阪大学の研究チームが開発した。
5月27日付の米電子版科学誌プロスワン「PLoS ONE」に発表した。
ADHD(注意欠陥・多動性障害)
自閉症(ASD)、アスペルガー症候群、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)などの生まれつき脳の一部の機能に障害がある発達障害。
ADHDでは、多動性や衝動性が目立ったり、注意力や落ち着きがなくなる傾向がある。
じっとしていることが困難で、手足をもじもじしていたり、おとなしくできずに席を離れて遊ぶ、しゃべりすぎる、他人の会話やゲームに割り込むなどの症状がある。
これらの症状は7歳までに現れて、男の子の方が女の子の数倍多いとされており、学童期(6~12歳)の子ども全体の3~7%存在するという。
多動の症状は、一般的には成長とともに軽くなる場合が多いが、注意欠陥や衝動性の症状は半数が青年期(13~19歳)まで、さらにその半数は成人期まで続くとされており、また、思春期以降では心身の変化で多感になり、うつ症状や不安障害を合併する子どももいて、その個人差が大きいのが特徴だ。
「目の動き」に着目
これまでは子どもの行動や本人らへの質問により発達障害を診断するのが一般的だったが、研究チームでは、物事の理解や判断を行う認知機能を研究する上で1つの指標になっている「目の動き」に着目し、モニター上で次々と点を表示させ、子どもが目でこれらの点を追うのにかかる反応時間を計測するシステムを開発した。
調査では5~11歳のADHDの子ども37人の反応時間を計測し、一般の子どもと比較した。
その結果、ADHDの子どもは一般の子どもよりも反応が少し遅かった。
目のスムーズな運動につながらず
このシステムにおいて、点の表示を変える際に一瞬だけ黒い画面を差し挟んだ場合の計測も行ったところ、一般の子どもは反応時間が短くなったのに対して、ADHDの子どもの反応時間はほとんど変化がなかった。
研究チームでは、一般の子どもは脳で変化を認知し、スムーズに目を動かすよう脳が働くが、ADHDの子どもの場合は、脳がうまく働かずに目のスムーズな運動につながらないと予測している。
今後、研究チームでは今回開発したシステムをADHDの客観的な診断法として確立するために、早期から適切なケアを提供できる態勢をさらに整えていく方針という。
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