脳・心磁場計測用の「TMR素子生体磁気センサ」を開発

最終更新日:2018年12月11日

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臨床工学技士コラム

脳・心磁場計測用の「TMR素子生体磁気センサ」を開発

2018.01.17

非侵襲的な機能検査として広く用いられている脳波・心電図などの「生体電圧計測」。脳内の活動を知るためには、このような電気測定による「脳波計測」を行うのが一般的だ。

一方、脳内の活動によって発生する磁場を測定する「脳磁場計測装置(脳磁計)」では、空間的精度の飛躍的な改善では、脳疾患部位の特定が容易になり、また、脳信号源を精度良く推定することで、脳機能の解明にも大きく貢献する。

東北大学は11月24日、安藤康夫氏(同大大学院工学研究科応用物理学専攻教授)の研究グループ、中里信和氏(同大大学院医学系研究科教授)の研究グループおよびコニカミノルタ株式会社が共同で、室温で簡便に動作する、高感度かつ高分解能の「トンネル磁気抵抗(TMR)素子生体磁気センサ」を開発し、脳磁図の検出(α波)に成功したと発表した。

同研究成果は、11月27日に、日本磁気学会第5回岩崎コンファレンス「社会基盤の向上につながる磁気センサとその活用」において基調講演として発表された。

空間的精度が低い「脳波計測」、非常に高価な「脳磁場計測装置」

「脳波測定」では、頭部を構成する組織内における電気の流れ方は不均一なため、頭皮の表面の電位分布を測定するにとどまり、脳内のどこでどのような活動が起きているかを直接的に探るような空間的精度が低いという課題がある。

一方で、磁場の歪みは電気と比較して無視できるほど小さく、「脳磁場計測装置」では、脳内のどこでどのような活動が起きているかの詳細まで知ることができる位置推定精度は極めて高い

すでに「超伝導量子干渉素子(SQUID)」を活用した脳磁計が商品化されており、限られた一部の施設で普及しているが、SQUIDの冷却に液体ヘリウムが必須となるため、非常に高価なものしか現状では存在しない

室温で動作する高性能な磁気センサを開発、脳・心磁場測定の高速化を実現

今回、共同研究グループでは、室温動作・小型で身体に密着しての測定ができるセンサの実現を目的として、「TMR素子」を活用した生体磁場検出用センサの飛躍的な高感度化・低ノイズ化に成功し、脳からの磁場信号(脳磁図)の検出(α波に相当)に成功

TMR効果は、「強磁性トンネル素子(MTJ)」(厚さ数 nm(ナノメートル)以下の非常に薄い絶縁体(あるいはトンネル障壁)を 2 枚の強磁性体の電極で挟んだ構造の素子)において、2 枚の磁性層の磁化の方向が「平行」の時に、2枚の電極間の抵抗が小さくなり、「反平行」の時には抵抗が高くなる現象のこと。

1994年に東北大学教授・宮﨑照宣氏によって発見された室温TMR効果から、「高密度ハードディスクの読み出しヘッド」、「高密度不揮発性磁気メモリ(MRAM)」へ実用化も進んでいる。

今回の開発によって、既存の脳磁計のような高価な液体ヘリウムを用いた冷却は必要なく、世界で初めて室温で簡便に動作するTMR素子によって脳磁場を捉えることに成功。また、同素子による心磁場計測でも、世界初の積算なしでの信号検出にも成功したという。

虚血性心疾患・不整脈などの心疾患診断、ウェアラブル化などの応用に期待

虚血性心疾患や不整脈等の心疾患の診断において、心臓の活動の様子をリアルタイムで非侵襲に測定することが可能になれば、診断技術を大幅に向上することが期待できる。

また、今回の計測技術は、特殊なシールドルーム(微小な電磁的測定の際に、電磁波を外部から遮蔽するための部屋)は不要になり、原理的には被験者が動いていても測定が可能であることから、リラックスした環境での脳・心臓のモニタが可能とされる。

さらに将来的には、素子のウェアラブル化によって、運動時・車載などの環境でも、被験者が無意識のうちでの測定が可能になるなど、「TMR磁気センサ」の応用範囲は格段に広がることが期待されており、同研究グループでは、計測医療分野に大きな変革をもたらすとしている、

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