低濃度ウイルスの簡便検出が可能なバイオセンサー開発へ

最終更新日:2018年8月15日

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臨床工学技士コラム

低濃度ウイルスの簡便検出が可能なバイオセンサー開発へ

2017.01.27

感染症や食中毒などの世界規模でのウイルスの拡散が見られ、様々なウイルス感染へのリスクが増大している。例年見られる「季節性インフルエンザウイルス」や「ノロウイルス」をはじめ、麻疹(はしか)の再流行やデング熱の大規模な流行なども近年では社会問題となり、また西アフリカで流行したエボラ出血熱(エボラウイルス)のような致死率の高いウイルスへの水際対策の強化も課題だ。

これに加えて、家畜のウイルス感染(鳥インフルエンザや口蹄疫(こうていえき)など)も頻繁に発生しており、その被害は大きい。

このようなウイルス感染症の予防の1つとして、感染前の段階でのウイルス検出を可能にする技術が求められる。

産業技術総合研究所(東京都千代田区)では2016年12月20日に、同研究所の電子光技術研究部門光センシンググループが「外力支援型近接場照明(EFA-NI)バイオセンサー」を開発したと発表した。

この新バイオセンサーにより、下水の二次処理水などの夾雑(きょうさつ)物を含んだ試料中のごく少量のウイルスなどのバイオ物質でも、夾雑物を除去することなく高感度に検出できるという。

同研究成果は、2016年12月19日付けの学術誌「Scientific Reports」(電子版)に掲載されている。

感度不足などのウイルス検出における課題

現在、ごく少数のウイルス粒子の検出には、「PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法」や「イムノアッセイ法」が用いられている。しかし、これらの従来法では、実験室などの清浄な環境下でのみしか検出できず、ごく少数のウイルスの正確な検知や環境水などの夾雑(きょうさつ)物を含んだ試料中の感度不足などは課題だった。

産総研では、従来微量のバイオ物質を検出する技術としてはセンサー表面(2次元)で対象を検出するセンシング技術を採用していたため、今回新たに濃縮効果による感度向上と夾雑物の影響による感度・選択性の低下の回避の両方を可能にするセンサリング技術の開発に取り組んだ。

「動き」を識別して、従来の数桁高い感度でウイルス検出

今回、新開発されたEFA-NIバイオセンサーでは、検出対象のバイオ物質に付着させた「磁気微粒子」と「光を散乱する微粒子」を磁石と近接場光の現象により「動く光点」とすることでウイルスを検出。

従来法には見られなかったこの『動き』としての識別により、夾雑物が多く含まれる試料中でも低濃度のバイオ物質を検出することが可能だという。

同研究グループでは、さらに高感度なウイルスセンサーの新技術の開発として、センサー表面から高さ数マイクロメートル(μm)の空間(3次元)に検出領域を広げ、都市下水の二次処理水(200μl)にノロウイルス様粒子(約80個)を混入(濃度10fg/mL程度)させた試料中から、この新手法によってウイルス様粒子を検出することに成功。

従来法で必要だった洗浄工程を省略した上でも、数桁高い感度でのウイルス検出ができることが示されたという。

ウイルス検出センサーシステムの実用化へ

同研究成果をもとに、研究グループでは、今後は血中バイオマーカーや環境中の汚染物質など幅広い分野で微量のバイオ物質を検出できるセンサーシステムとしての実用化を目指すという。

すでに、試作機は作製段階に入っており、検出感度の向上や定量性の維持など性能向上を図りながら片手で持ち運びできるようなサイズにしており、今年の春ごろには低濃度ウイルスの簡便検出が可能な装置が完成する予定としている。同研究グループでは、感染力の強いウイルスの感染予防に役立てていきたいとしている。

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