移植用臓器の寿命が延伸する

最終更新日:2018年10月23日

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臨床工学技士コラム

移植用臓器の寿命が延伸する

2016.08.10

アメリカ、マサチューセッツ州のメイン都市、ボストンのマサチューセッツ総合病院には先進医療の世界で名高い臨床工学技士Korkut Uygunらのチームがいる。
彼らがなぜ有名なのか、その活動に期待が寄せられているのか紹介しよう。
まず、移植用臓器の移植可能期間について認識しておきたい。手術に携わる臨床工学技士ならご存知だろうが、ドナーから採取されて以降12時間しか猶予はないのだ。
ドナーから安全に、使用できる状態で臓器を取り出す手術。それから移植する手術室への搬送。移植手術と、行程を考えると非常に短いと思われるだろう。
実際、この時間制限が移植手術成功の大きな壁になっていた。だが、彼らが2014年に発表した研究の成果によって、その時間が3倍にまで伸延できる可能性が出てきたのだ。

臨床工学技士チームの研究結果とは

彼らが行った実験の被検体はラットだったが、実際に取り出した臓器を3日間も保存できたと言う。
通常の凍結保存では取り出した臓器の機能が破壊されてしまうため、日をまたぐ保存は不可能とされてきた。だがマサチューセッツ総合病院のチームは不可能を可能にする手法を生み出したのだ。

まずは移植用の肝臓を取り出し、これに大量の酸素と専用の不凍液を送り込む。その後段階的にマイナス6度にまで冷却すると、ラットの肝臓であれば氷結することなく3日間も新鮮な状態を保つことができた。
次に、移植の段階ではゆっくり温度を上げて、肝臓を満たした不凍液を抜く。これでラットへの移植手術は成功したのである。比較のために通常の手順で保存された3日目の肝臓を移植したラットはすべて死亡したとのこと。
過冷却の手法を用いた臓器を移植したラットは少なくとも3カ月以上生き延びたと言うから、この有効性は論じるまでもないだろう。

移植手術の「壁」は乗り越えられるのか?

どんなに医学が進歩し、移植手術という「最後の手段」があるとは言っても、そこには打ち崩すことのできない壁が残っている。
時間制限の問題だけではなく、ドナーの身体的負担や倫理的な問題だ。
特に心臓移植については難しいところだが、それにしても「移植すれば生き延びられる」という可能性を提示されていながら、ドナーが見つからずに日々命の危険にさらされている人々にとってはたまらない現状だろう。

現在日本で移植を希望し、移植希望者登録を行っている人数は以下の通り。

■臓器移植希望者数(2016年8月8日時点)
・心臓:512人
・肺:304人
・肝臓:362人
・腎臓:12,426人
・すい臓:203人
・小腸:5人
・内、心肺同時:5人
・内、肝腎同時:13人
・内、すい肝同時:152人

この1か月ほどで心臓の移植を求める患者数は4人、肺移植を求める患者は3人、肝臓移植を求める患者は3人、すい臓は2人増えた。
腎臓移植を求める患者については248人減った。
念願叶ってドナーが見つかり、手術を終えて登録から外れた人もいるだろう。だが、移植が間に合わずに命を失った患者が少なくないはずだ。

ドナーの選択範囲拡大や、こうした手法による時間的な余地を広げること。常に壁を乗り越えていく医療従事者の積極的な姿勢が、いつか患者や患者家族を絶望から救う日が来るのではないか。
希望を見据えて、すべての医療従事者に研鑽を積んでほしい。

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