運転中の高齢者、「連続する赤信号」に怒りを感じやすく
2018.08.28
近年、「あおり運転」などの交通トラブルが事件となり、大きな社会問題となっている。
人は自動車を運転していると、日常での他の場面より怒りが生じやすいとされ、例えば、「無理な追い越しにあう」というような運転中の不快な出来事に遭遇すると、「列に割り込まれる」といった運転以外の日常生活での不快な出来事よりも怒りを感じる割合が高まるとの研究報告もある。
また、怒りを感じることの多いドライバーは、『危険運転』を行いやすい傾向があることも示されている。
名古屋大学は7月11日、川合伸幸氏(同大大学院情報学研究科准教授(中部大学創発学術院客員准教授))と中田龍三郎氏(特任講師)らの研究グループによって、心理実験や脳計測から、運転中の高齢者は、「連続する赤信号」に怒りを感じやすいことを明らかにしたと発表した。
同研究成果は、科学誌「Japanese Psychological Research」に掲載された。
運転シミュレーターによる行動実験を実施
これまで、実際に運転中に怒りを感じることを実験的に示した研究はなく、今回の研究では行動実験を実施。
65~74歳の高齢者(平均70.2歳)と19~31歳の学生(平均21.7歳)に協力してもらい、大型の運転シミュレーター(全長4.0~6.2kmの一般道路)を使って、法定速度でできるだけ早く走行してもらった。
その結果、主観的な攻撃度を反映する「怒り行動尺度得点」において、学生には変化は見られなかった一方で、赤信号走行後の高齢者では、安静状態よりも高くなったという。
青信号走行後では、高齢者と学生のいずれも変化はなかった。
前頭葉の実行機能が弱いと怒りを感じやすく
また、頭の左右対称な位置で脳血流に含まれる酸化ヘモグロビン量(oxy-Hb)を測定した結果、高齢者は、赤信号の停止中で『左側の酸化ヘモグロビン量』が右側より増加(学生は左右ともにほとんど変化なし)。
過去の研究報告から、左前頭葉の活動が右前頭葉より活性化するのは、「怒り(攻撃性)」を反映することが示されている。
赤信号後の次の黄色信号でも、高齢者の前頭葉は左の活動が高く、怒りを持続していることも判明したという。
今回の行動実験前に、高齢者の前頭葉の実行機能の評価検査を行った際には、前頭葉の実行機能が弱い高齢者ほど赤信号でヘモグロビン値や攻撃性得点がともに高まり、「前頭葉の実行機能が弱いほど怒りやすい」ことが明らかになったとしていう。
高齢者の運転中の「怒りの抑制」に係る研究に期待
今回の研究結果から、高齢者は赤信号で連続して停止する際に怒りを感じることが明らかになった。
日本国内では、高齢者の交通事故が増加しており、今回の研究は、イライラするような交通状況で、特に高齢者が怒りやすいことを初めて示したものだ。
同研究グループでは、今後は、怒りをどのように抑制できるかに係る研究が進むことが期待されるとしている。
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