公開日:2017.01.18
最終更新日:2021.10.06
高齢化に伴い、国内における認知症高齢者の増加が顕著になっている。これは国際人口の高齢化が進む中でも同様の傾向で、3000万人以上が認知症に罹患していると推測されている。
しかし、現状としては認知症の治療法は確立しておらず、患者数は2050年に3倍近くになると予想される。
患者支援団体のアメリカ心臓協会(AHA)では新たな科学的声明として、ワイルコーネル医科大学(米・ニューヨーク市)の研究グループが発見した『特に中年期の高血圧が認知症リスクにつながる可能性がある』ことについてはほぼ決定的だとして警告している。
このAHAの新たな声明は高血圧に関する研究を紹介しているAHA学会誌「Hypertension」(電子版)に2016年10月に掲載された。
高血圧は脳に悪影響、心臓や腎臓にも負担
『高血圧の人は認知症になりやすい傾向がある』。これが今回の科学的声明だが、一方で「血圧をコントロールすれば認知症リスクが低減する」ことは科学的には裏付けられなかったようだ。
同研究グループでは、高血圧は脳にとって最も良くないとしており、その理由としては高血圧が脳の血管を損傷して動脈硬化をもたらすこと、また小血管を損傷して脳の血流のコントロール能力に影響を及ぼすことを挙げている。
さらに、脳に限らず、心臓や腎臓が損傷することを抑制・防止するにも血圧の治療が重要ポイントになると推測している。
高血圧と認知機能の関連性を大規模試験で追求へ
これまでの降圧治療を受ける患者を対象にした観察研究では、認知機能が向上したことも確認されている。
ただし、今回研究グループが精査した試験のほとんどは高血圧の認知症への直接的影響を検討したものではないため、高血圧患者の確率された治療方法として医師へ勧告を行えるまでには至っていないようだ。
同研究グループでは高血圧と認知機能の関連性を明確にするために、一万人以上を対象にした大規模試験(SPRINT臨床試験)を行うことが重要としている。
一般的には、高血圧との診断を受けた時期から認知症を発症する時期までの期間はブランクがある。
そのため、今後長期研究を行うことで、脳の保護にはどのタイミングで治療を開始すべきか、どのような薬剤が有効か、理想とされる血圧値はいくらかなどを検討していくことが求められる。
認知症予防を目的とした中年期の血圧治療法の確立も
近年では、『SPRINT-MIND臨床試験』と呼ばれる高血圧治療の認知機能障害に及ぼす役割評価が行える新しい研究法が現在進行形で開発されており、これにより疑問の一部に対する新たな答えが得られる可能性もあるようだ。この試験結果が出るまでは患者個々に合わせた高血圧治療が推奨されている。
今回の声明では示されていないが、降圧治療が認知機能の向上を促進することからも中年期の血圧コントロールがその後の認知症リスクを低減できる可能性は高い。
しかし、中年期に高血圧を放置した場合では高齢期に治療を開始してもメリットは得られず、むしろ有害となる可能性があるとの報告もある。そのため、45歳を目安に介入措置を開始することで検討されているようだ。
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