公開日:2016.09.26
最終更新日:2021.10.06
政府が介護保険の費用抑制を目的に介護サービスの見直しを検討している。
「福祉用具レンタル」は身近な介護サービスであるが、この福祉用具レンタルに掛かる費用を要介護度が軽い(要介護1〜2)高齢者の場合は、「全額自己負担化」する方針が財務省の案として打ち出された。
厚生労働省の今年2月分の統計データでは、介護サービスで福祉用具レンタルを利用した184万人のうち、要介護の軽い利用者はその6割にあたる114万人になっている。
これから推測される要介護の軽い高齢者の福祉用具レンタルに掛かる介護保険は、介護保険全体の1.5%以下であるため、これが国の医療費用抑制につながるのかという疑問の声も上がっている。
介護度の軽い要介護1〜2の高齢者
介護度の目安としては、「要介護1」では立ち上がりや歩行について「不安定」とあるが、「要介護2」では「自力では困難」とされる。また、生活の介助でも「排泄、入浴」に「衣類の着脱」も加わる。この「要介護1・2」が今回対象になるの軽度の要介護者とされている。
介護サービスとして利用できる福祉用具レンタルには、車いすや移動用リフト、トイレやベッドに設置できる手すり、歩行器、電動ベッドなどの13種。
要介護1では原則的には歩行器や手すりなどのみ利用できるが、要介護2になるとそのほとんどが利用できる。
例えば、75歳以上の後期高齢者(一割負担)で要介護2であれば、車いすだけなら月数百円でレンタルでき、利用者の在宅での自立した生活に役立っているわけだ。
利用期間によっては「福祉用具購入」時よりも高額になる場合も
この介護サービスにより複数の用具レンタルでも一割負担であれば月数千円のレンタル費用で済むところが、全額負担になれば十倍になり月に数万円、年間を通してレンタルすると数十万円の費用になる。
例えば、介護サービスでは車いすは「福祉用具販売」に適応されておらず、全額負担で2万円程度の購入になるが、利用する期間が数ヶ月見込まれるのであれば、購入してしまった方が経済性は良いことになる。
また単に経済性だけの問題ではなく、利用者の中からは、この福祉用具レンタルサービスを利用することでQOLを維持して元気で生活できていたという声が上がっており、逆に今回の「全額自己負担化」のせいで介護重度者か増えることにつながるのではとの反発や懸念の声も出ている。
訪問介護サービスやバリアフリー化の改修費も縮小見直しの対象へ
300を超える福祉用具供給事業者が会員となる社団法人日本福祉用具供給協会(東京都港区)による調査では、福祉用具レンタルにより用具利用者の9割以上が転倒の不安が軽減しているという。
その一方で、福祉用具レンタルが使えなくなれば「訪問介護」を依頼したいという意見やレンタル出来なくなることで行動が制限されて心理的な悪影響を及ぼすという意見は多い。
政府では昨年閣議決定した「骨太の方針」において、この要介護度の軽い高齢者の福祉用具レンタルの他、訪問介護サービスの一部内容(掃除、買い物などの生活援助)やバリアフリー化のための住宅改修費なども縮小見直しの対象にしている。
福祉用具レンタルについては、すでに財務省が介護保険給付から外す「原則自己負担」を主張(一部還付も検討)。これらすべての検討項目について、厚生労働省社会保障審議会介護保険部会では今年内に結論を出すという。
また介護サービスの縮小とともに医療費負担を増やすことも検討されており、介護は2018年度、医療が2017年度以降に実施していく方針。今回の結論をきっかけに「介護保険制度の信頼性」は崩れてしまうのだろうか。
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